サイケやアシッドフォークといった音楽をテープコラージュ的手法で構築したトロピカル・サイケの傑作ファーストアルバム『Magnetic Pilgrimage』に続き、約1年5ヶ月ぶりに発表されるセカンドアルバム。文学的で童話的な世界観はそのままに、今作ではさらに歌への比重を強めている。ギター、ウクレレ、カシオトーン、ピアノ、カリンバ、ドラム、パーカッション、鍵盤ハーモニカ、ターンテーブル、シンセサイザーなど、様々な楽器を用いて構築された世界観をテープ音楽独特の質感でまとめあげている。アヴァン・ポップの奇才、藤田建次が生み出す、ちょっぴりロマンチックで、ちょっぴり切ない、摩訶不思議な世界。狭くて小さな四畳半、懐かしい昭和の残響、少年の日の夢と希望と現実が、繋がっては離れ、また繋がっては離れる。
これは少年が空っぽの銀河系に散りばめた壮大なファンタジアだ。
01.昔話の教訓
02.虹空を蒔く
03.森の王様
04.忘れ傘
05.ポリフォニー
06.東京の反射
07.果て
08.空っぽの銀河系
09.ベルリナーの子供達
10.偏西風
11.雨乞い時報
12.煙突掃除夫の結末
13.おんぼろ飛行機
14.メルカトル図法の実践
15.公団の夕
16.蒸気の時代
17.飛ばない伝書鳩
18.言い伝えの変容
19.微睡みのころを過ぎても
20.架空の子午線
21.逆さまラクダ
22.団欒と離散の記録
23.逃げ水の思いで
収録時間:約45分
コメント:
庄司広光(soundworm)
放課後、自転車に乗って坂を降り、スポーツ用品店で肉まんを買い、Yの家に上がり込む。外はまだ寒く、灯油売りのアナウンスが風に混じって聴こえてくる。階段をずかずか上がると、Yの部屋のぼろいカセットデッキから聴き馴れない音楽が流れてる。「これ何なん?」と聞こうとして身体が止まった。スピーカーから、寒い部屋に充満していく磁性粉のエコー。その赤茶けた粉の一粒一粒が点滅するように揺らぎ、星空のように視界を覆っていく。Yも黙ったまま、その粒子の震動に同調してるように静かに座っている。僕はすっかり冷めてしまった肉まんをひとつYの方に放り、磁性粉だらけの部屋に腰を下ろした。
MABR010/MOKUME017
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